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電子部品・半導体
市況マンスリーレポート
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2024.09.01

トップ10から外れた日本の半導体輸入額

わが国半導体輸入額は、この上期で世界トップ 10 から外れた。これまで 10 位にとどまっていたが、初めてタイに抜かれた。   半導体は小型軽量、品種も多く貿易は極めて活発。世界上位国の今年上期実績を図に示す。輸出入ともに中国、香港がトップで、かつシェアも高い。半導体貿易の特徴は、その動静が半導体と電子機器等システムのエレクトロニクス産業そのものの競争力を示しているということだろう。   世界的に半導体で力を持つ台湾は世界のパソコン、 IT 機器でも強く、同じく韓国はスマートフォン、家電、半導体世界トップの米国は IT 産業に君臨。中国は、家電、パソコン、スマートフォンそれから IT と全分野で存在感を高めている。   同じように貿易が盛んな石油あるいは農産物などでは、輸出国と輸入国の色分けがはっきりしているが、半導体の場合は、輸出も輸入も活発なのが特徴。半導体はエレクトロニクスの基盤、最重要技術であり、常に進歩、最大の経済効率が追求されている。これは半導体の組立検査でアジア諸国が大きなシェアを持つことでも示される。   このような視点からみてわが国半導体輸入額が世界 11 位に転落したことは、今後に与える影響が懸念される。国内では、スマートフォン、薄型 TV などの生産が事実上消えつつあり、競争力が問われている。半導体は、最新技術の象徴で新製品、新市場開拓の宝庫といっても過言ではない。   政府は、半導体産業の強化策として台湾 TSMC の生産工場の日本誘致、最先端製造技術開発のラピダスへの支援など進めており、成功すればわが国半導体の生産拡大、輸出増大につながろう。一方で、輸入拡大、これはわが国エレクトロニクス、システム産業の強化も重要だ。   振り返ればわが国特産品ともいえる電卓、ゲーム、パチンコ、カラオケ、 AV 機器、カメラ搭載携帯端末などヒット商品も数多く生まれている。現在は、デジタル赤字の増大が、課題になっているが、日本の底力、固有の歴史、文化、価値観など力を発揮できそうな面は少なくない。   今の状況はパソコン、インターネットの普及が加速した「ウインドウズ 95 」登場の 30 年前と似た状況で「 AI 」が注目されているといわれるが、世界の先端技術を使いこなし、ヒット商品、市場を開拓、半導体貿易が活発になることを期待したい。   2024 年 著作権保有 (株)SRL     この資料の複写、複製その他電子的な方法等によるいかなる形での複写利用、再配布をお断りします。

2024.08.01

絶好調と不振が混在する半導体市況

半導体市場は内外ともに「明暗混在」、とくに今年は分野によって差が顕著。日本市場は先行き要注意だ。   今年上期( 1 - 6 月期)の統計がまとまり、半導体市場は世界全体で前年比 18.1% 増、日本は 5.8% 増と全体では好調だった(世界半導体市場統計 =WSTS 調べ)。しかし、 AI プロセッサの米エヌビディアは絶好調の一方、インテルは人員削減と真逆の動きが目立つ。   先端 AI プロセッサは、入手難、価格高騰、関連した DRAM や NAND はこの上期で 9 割増の絶好調。一方で、個別素子、オプト、アナログ、センサーなどはマイナスだ。製品や市場によって異なる動きが出るのは、この分野では珍しいことではないが、今年は変化が大きい。   日本市場に限っても、今年上期は全体ではプラス成長だが、それは MPU (ノートパソコンやデータセンター向けサーバー)及びメモリ(直近の値段は前年比倍増)によって金額が維持され、それ以外は大幅な落ち込みとみられる。ちなみに輸入金額および数量は 1 年前に比べ 2 割前後落ち込んでいる(図参考)。   従ってある分野は絶好調だが、それ以外は大幅な落ち込みと落差が大きく、日本に関しては、好調分野は限られるとみられる。今後はどうだろうか。 AI のブームは緒についたところで、データセンターの建設、 AI 搭載機器の開発は活発になる。   気になるのは、日本市場で中心的な存在を占める輸入半導体が図に示されているように右肩下がりの傾向を金額、数量ともに示していることだ。一方、日本市場全体の金額は今年第 1 四半期に一服したものの直近第 2 四半期は上向いた。   好調なハイブリッド車向けなどの需要が奏功していると思われるが、自動車メーカーは国内では認証不正問題、海外では中国勢との競争激化など課題を抱えており、半導体需要の増大に陰りが生ずる可能性もある。   訂正とお詫び:本欄 2023 年 11 月「落ち込まない日本の半導体市場」の図で「輸入数量」の 2019 年第 1 四半期の数字が間違っていました。訂正、更新した図を今月号で掲載しております。訂正しお詫び申し上げます。 (SRL、大竹 修)   2024 年 著作権保有 (株)SRL     この資料の複写、複製その他電子的な方法等によるいかなる形での複写利用、再配布をお断りします。

2024.07.01

来年は25年ぶりにブーム再現か

世界 GDP に占める半導体の生産額比率は 2000 年に最高を記録したが、その後は低迷。しかし来年は 25 年ぶりに記録を更新しそうだ。   半導体は、より微細な世界を追求、それが性能価格を向上させ、経済社会上での役割を高めてきた。それは例えば世界 GDP に占める半導体生産額が増大することで示される。世界 GDP に占める比率を図に示す。   この図でわかるのは、 2000 年頃まで比率はほぼ着実に向上してきたが、その後は、横ばい傾向で、 2009 年の世界経済危機、 2012 年の東日本大震災当たりは、落ち込みがみられる。近年 21 年、 22 年は再び比率が上昇したが、 23 年は落ち込んだ。   このような推移をみると半導体金額、つまり市場の拡大は、対 GDP でみても容易ではないことがわかる。私の経験でも、かつて半導体の比率は増加すると想定したが(本欄 2012 年 7 月、やはり半導体は重要) 23 年では 0.52 兆ドル、 74.28 兆円にとどまった。対 GDP 比 0.50% にとどまる。   しかし、先に世界半導体市場統計( WSTS )が発表した半導体市場見通しでは、 2025 年に対 GDP 比で過去最高だった 0.60% に達する。世間では、 AI チップの米エヌビディアの時価総額が世界トップ、わが国株価も最高を更新するなど明るい話題が多く、対 GDP でも来年は 25 年ぶりに記録を塗り替えそうだ。   振り返れば 2000 年は IT ブームで、米国市場を中心にインターネット関連投資が活発になり、ブームをもたらした。 95 年も比率が高まったが、これはウインドウズの導入によるパソコンブームが起こった時期だった。   このような歴史をみると、いまは来年 25 年につながる AI ブームの突入段階で、それが関連半導体企業への投資につながっているのかもしれない。 AI がかつてのパソコンやインターネットに比べてどれほど衝撃をもたらすか、いろいろな見方があるが、いずれにしても、期待できそうな分野だろう。   ただし注意が必要なのは、ブームの行き過ぎでバブルが崩壊、大きな反動をもたらすことで、 2000 年の IT バブル崩壊はまさにそれを如実に示した。     (SRL、大竹 修)   2024 年 著作権保有 (株)SRL   この資料の複写、複製その他電子的な方法等によるいかなる形での複写利用、再配布をお断りします。

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